【書評】 星新一 一〇〇一話をつくった人

本の内容

星新一氏の半生について綴った本。妻__や父・星一、祖父小金井良精といった周辺人物から本人の関係性を紐解いている。

学歴コンプレックス

なんとなく私が学歴に対してコンプレックスがあったのは、彼の作品や生い立ちが影響しているのではないか。というのも、彼自身理系の大学卒で優秀だった。また小学校もお茶の水女子小学校から始まりエリートコースを歩んでいる。無論、父の会社を引き継ぎ倒産ということもあったのだが、基本的には学業が優秀で医学や天体・宇宙などの知識も豊富である。

学歴だけが人を決めるのではないとは思うが、それは特に学のない私から言えば単純に負け犬の遠吠えである。だからこそ、自分に学がないことを恥じ、学歴に囚われてしまっているのだろうと感じている。

もし幼い時に学ぶことの面白さーー学歴の重要性ーーに気づいて、貪欲に知識を吸収していたとしたら、私の人生も変わっていたのかもしれない、と今になって思う。思うのだが、逆に今この生涯を生きているからこその人生でもある。今の人たちとの出会いはないし、もし…だったら、などというくだらない幻想に想いを馳せるような歳でもない。そろそろそういった幻想からは抜け出さなければならないのだ。

仕事に対して

星一氏の実業家としての考え方を尊敬する。「親切第一」「協力第一」と言った当時としては先進的な考え、経営者としての力ーー残念ながらそれは形として残ることはなかったがーー、周囲に与えた影響、自分の金を惜しみなく教育や周りの困っている人に投資する。そういった点が私の目に格好良く映る。

星製薬会社

新一氏が父親の星一氏から引き継ぐこととなった製薬会社。その顛末が周辺人物の関わりとともに描かれる。

が、内容は今見ても難しく、非常に暗く、重苦しい雰囲気が漂う。これが面白いと感じるようになったのは、年齢の関係もあるのだろう。おそらく今までの年齢では、これを面白いとか積極的に読みたいという思いは少なかっただろうし、会社や企業に関わることなど我関せず、で全く興味がなかったに違いない。

それが、今では当時どんな問題があったのか、それを解決させるためにはどうすればよかったのか−−などと考えるようになった。これはやはり、社会人として多少なりとも経験ができ、自分でも感ずるところができてきたのが大きいのだろう。

なかなかこの問題は解決されず、父親の死、継承問題、さらに銀座でのバーの話、後述する SF クラブ加入の話などが入るため、相当なボリュームが割かれている。

SF クラブ加入

彼が SF クラブ加入に至った経緯、設立者との関係、そしてどうやって「星新一」として売り出していくか…が書いてある。

彼の他と違った視点・文体は、デビュー作「セキストラ」で証明される。

読了

複雑。無論、良いことばかりだけではなかった。

父親の事業失敗が後年、彼の人生においてずっと暗い影を落とすことになる。ショートショートを書き続けたが故に、ショートショートから逃れられなくなる。一つのことにこだわり続け、その逆を進むことは彼が●●に対して言った「…」の言葉がそのまま彼自身に返ってきている。彼自身がショートショートから逃れられなくなったのは、主にいくつかの原因があるのではないか。自分の作品に真摯に向き合った結果、常に時代に合わせて表現を変え続けた。だがそれは、時事風俗を除くが故に、常に自身の作品が風化してしまうという恐怖との戦いとなってしまう。彼自身もっと上手くやればもっと長生きできたのかもしれない。

一言で言うと?

難しい。彼が作品を生み出し、1001編という膨大な数を生み出したのは、彼にショートショート作家という肩書きを確かなものとし、逆にその肩書きから逃れられない、障害、ショートショート作家として生き続けなければならなくなってしまう結果をもたらしたのではないか。彼もいずれは短編・長編小説を書いてみたいと言っていたが、ショートショートを書き続けなけれはならなくなってしまった。そういう見方もできるのではないか。

単純に「1001話を書いてすごい人でした、めでたしめでたし」ではなく、その作業を達成するが故の悲哀が感じられた(いろんなものやことを犠牲に成り立っている、例えば…父親の事業倒産、これがなければ「星新一」はなかった、義理の兄弟の存在…など)

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